おはようございます。
鈴鹿(三重)の税理士、谷田です。
ここ何年か、6月の終わりから7月の初めにかけて、熊本、大阪、九州北部、広島と毎年のように、川の氾濫や土砂崩れによる被害に見舞われてきました。
これも地球温暖化の影響と考える説もあるようです。
海水の温度が上昇することによって大量の水蒸気が発生し、これが豪雨をもたらすという考え方です。
法令や制度によってやらされる環境対策ではなく、一人ひとりが自主的に環境問題を考えて行動する時代にならないと解決は難しいかもしれません。
今日も、梅雨空が広がり、時折激しい降雨に遭いました。
ある税理士の一日【令和3(2021)年7月2日(金)】
本日は朝から歯科医院に通院し、その足でコンビニで住民票交付を受け、地区市民センターで顧問先様の戸籍関係書類を取り寄せ、金融機関に立ち寄って戻ってきました。長時間待たされたり渋滞に巻き込まれることなく、約2時間半で済ませることができました。
この間に顧問先様が当事務所に立ち寄られ、裁判所から届いたという書類を置いていかれました。
そこには、「過料決定」「主文」「理由」「適条」といった物々しい言葉が書かれていました。
顧問先の社長に対して刑事罰が下されたということになります。
何の前触れもなく、4万円の過料金を支払わなければなりません。
今回はこの「会社法違反事件」について、考えてみたいと思います。
早めの昼食を済ませ、12時過ぎに事務所を出掛け、13時に顧問先を訪問しました。
決算・申告書類を解説し、サインやご捺印をいただきに行ったのですが、解説の必要はほとんどありませんでした。
すでに内容を熟知してみえ、粗方(あらかた)翌期の予測もできてみえるからです。
逆に私のほうから、決算書類に関して少し質問をさせていただき、即答によって納得しました。
そんなわけで、思っていたほど時間がかからず、高速道路を利用して税務署に向かいました。
郵送でもかまわないと言われていた届出書を、税務署の窓口に提出しました。
またまた余談になりますが、どこの税務署でも、一般の納税者用の窓口(たいていの場合1階)と税理士(代理可)専用窓口があります。
一般用の窓口では、「グリーンシート」(私が勝手に名付けた緑色の紙のことで、住所や名前など)を書かなければなりませんが、2階の窓口(総務課)では必要ありません。
本日は、うっかり1階の総合窓口で番号札を取って並んでしまいましたが、しばらくしてから気づいて2階に登っていきました。
2階では、「グリーンシート」を書くこともなく、またされることもなく、スムーズに書類の提出を終えることができました。
これで、ここ何ヶ月か悩まされてきた案件を、事実上片付けることができました。
夕方には、これもまた半年以上悩まされてきた手続を郵送で済ませることができました。
ということで、本日は悩ましい案件を2件片付けることができ、よい週末にすることができました。
夜お会いすることになっていた士業の先生との面談は、奥さまの体調が優れないということで、順延となりました。
本日午前中にお預かりした裁判所から届いた書類について、お尋ねしようかと目論んでおりましたが、これも順延となりました。
蒸し暑い一日ではありましたが、昨日の予想どおり、今日もたいへん充実した一日を過ごすことができました。
ありがとうございました。
それでは、今回はその「事件」を取り上げたいと思います。
この「事件」につきましては、株式会社の役員の方にとっては他人事ではないと思いますので、是非ご参考になさってください。
法人役員の登記について
本日お預かりした裁判所からの書類によれば、「適条」という欄に、
会社法915条第1項,976条1号,非訟事件手続法54条,120条,122条
と書かれていました。
そこで、会社法976条1号は次のとおり定められていました。
(変更の登記)
会社法第915条
会社において第911条第3項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
つぎに、会社法976条1号の条文は以下のとおりです。
(過料に処すべき行為)
会社法第976条1号
発起人、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、会計参与若しくはその職務を行うべき社員、監査役、執行役、会計監査人若しくはその職務を行うべき社員、清算人、清算人代理、持分会社の業務を執行する社員、民事保全法第56条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役、執行役、清算人若しくは持分会社の業務を執行する社員の職務を代行する者、第960条第1項第5号に規定する一時取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役若しくは代表執行役の職務を行うべき者、同条第2項第3号に規定する一時清算人若しくは代表清算人の職務を行うべき者、第967条第1項第3号に規定する一時会計監査人の職務を行うべき者、検査役、監督委員、調査委員、株主名簿管理人、社債原簿管理人、社債管理者、事務を承継する社債管理者、代表社債権者、決議執行者、外国会社の日本における代表者又は支配人は、次のいずれかに該当する場合には、100万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
一 この法律の規定による登記をすることを怠ったとき。
役員登記の失念について
平成18(2006)年5月1日に、会社法という法律が創設されました。これは、それまでの商法に定められていた内容を大幅に見直して作り直された法律です。
たとえば、会社法が制定されるまでは、株式会社の取締役などの役員は、2年に一度登記をしなければなりませんでした。これは、役員の任期が2年と定められていたためです。
この2年に一度の登記によって、印紙代や司法書士の報酬などの経済的な負担を負わなければなりませんでした。
ところが、この会社法が制定されると、これらの役員の任期は最長10年にすることができるようになりました。
今回の法人も、定款において、取締役の任期を10年と定めていました。定めたのは、平成21(2009)年3月27日で、このとき、私はまだ関与していませんでした。
ということで、この法人は、平成31(2019)年4月10日までに役員の登記をしなければなりませんでしたが、今春気づいて4月15日にようやく登記を済ませました。
おおよそ、2年も経ってからの登記となります。
この場合、先に示した法令(会社法976条1号)によれば、「100万円以下の過料」となります。
今回の場合は、「4万円の過料」となっているので、適法と言えます。しかし、これが妥当か否か?よくわからなかったので、少し調べてみました。
「過料4万円」の妥当性
裁判官が決めたことなので、誤りはないような気はしますが、今回のような役員登記の失念で「過料4万円」が妥当なのか?調べてみました。
出典は「弁護士ドットコム」というサイト(インターネットを通じて質問し、これに弁護士が回答する仕組み)で、これが正しいとは限りませんが、参考にしたいと思います。公開日は「( 相談日:2017年10月09日)」となっています。
会社法第976条第1項 役員の変更登記が遅れた場合
というタイトルで、その相談内容はつぎのとおりです。
会社法第976条第1項で、会社法上、会社の登記事項に変更が生じた場合、2週間以内に変更登記を申請しなければならないと定められています(会社法第915条1項)。
「登記事項に変更が生じた」とは、それぞれの登記ごとに起算日が異なりますが、例えば取締役が新たに就任したケースですと、取締役が株主総会の決議で選任され、その取締役が就任をした日から起算して2週間ということとなります。2週間を経過した場合に登記申請を行ったとしても、登記自体は問題なく受理されることとなります(2週間が経過してしまったことを理由として却下されることはない)。しかし、この2週間の期限をやぶって登記申請をすると、代表者個人に対して100万円以下の過料の制裁を受ける可能性が出てきます。
となっていると思いますが、現実的に科料の制裁を受けた判例をご存知の先生はいらっしゃいますか?
2週間から、1ヶ月くらいの遅れであれば、お咎めなしですむのでしょうか?
登記所から、裁判所への連絡でなく、登記簿を取得した、ライバル会社などから裁判所へ登記簿を送らせてしまうと、科料の対象になりうるのでしょうか?
よろしくお願いします。
過料の制裁を課されかけたのを一度だけ見たことがあります。
その時は,故意ではなかったと弁明して通りました。
上場企業の取締役の登記だったと思います。
この回答からは、過料を課された例はほとんどなく、あっても一度だけで、しかも上場企業の場合と書かれています。
その怠った期間は不明ですが、制裁が課されることは稀なのかもしれないという印象を受けました。
つぎの回答も引用します。
2週間から、1ヶ月くらいの遅れであれば、お咎めなしですむのでしょうか?
→1ヶ月程度では、過料にはならないと思われます。
中小企業では、登記を放置という企業も多いですので、1ヶ月で過料に処せられていたのでは、裁判所は業務が回らないと思います。実際に知っているのは、1年で3万円というケースが上場企業でありました。
しかし、司法書士との話では、それは高すぎると言っておられました。金額はケースバイケースという他ないと思います。
ただ、1年を過ぎると要注意というのは一致した意見でした。
ですので、遅れるにてしも、1年は超えないよう気をつけてください。ご参考までに。
- 1年を超えなければ、制裁を加えられず、1年を超えても3万円の過料で、しかも上場企業。
- 今回の法人様は、上場企業ではありませんが、2年と3日の間、役員の変更登記を怠っていたことになります。
- 単純な比較はできませんが、期間が2年も超えているあたりからすれば、妥当性を認めざるを得ないのかもしれません。
これらのことを顧問先様に解説したいと思います。
おわりに
電話でお話をした際には、お金を払うことは致し方がないものの、「うっかりしていただけなのに」という思いが強いようでした。
たしかに、元号が平成から令和に代わって、10年経過を確認しにくい時期でもありました。
気持ちの整理がつきにくい場合には、訴訟もいとわないのか?どうか?
一週間以内に異議申し立てをするのか?否か?
といったところまでは未確認なので、ヒアリングを重ねて行きたいと思います。
なお、これからは役員の任期についてもしっかりと管理しなければ、顧問先様に刑事罰が下されることを忘れないように対応させていただきます。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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