持続化給付金の不正受給報道を読む
本日(令和2年(2020)年10月8日(木曜日))は、終日雨模様のお天気でした。台風14号の進路が気になるところです。どうやらこちらの方に向かって来るとの予報です。まだ台風に備える時間はわずかながら残っています。
持続化給付金の申請もだんだんと落ち着いてきた感がありますが、その後本年1月~3月開業の救済措置が採られ、税理士等による「申立書」のご要望も一区切り着いたように思います。最近は、持続化給付金の不正受給に対するご意見をよく承(うけたまわ)るようになりました。
そこで今回は、実に4兆5000億円もの国家予算を費やした持続化給付金に対する不正受給について、またその報道を通読したいと思います。どうぞご参考になさってください。
持続化給付金不正受給関する報道①
毎日新聞(10月7日)によると、
「新型コロナウイルス対策で個人事業主らに支給される持続化給付金を巡り、警察の摘発などを恐れる不正受給者から返還希望が殺到していることを受け、国が返金手続きの一部を7月から停止していることが6日、中小企業庁への取材で明らかになった。希望自体は受け付けているが、誰からの返金かを明確にするため個別に受付口座を準備中で、振り込みを待たせている状態が続いている。
中小企業庁によると、専用のコールセンターで返還希望を受け付け、今月下旬ごろをめどに返金の方法を郵送で案内する方針。」
一昨日、不正受給者からの返還を、3か月間もの間、停止していたことがようやく明らかになったことになります。いくら「殺到」しているとはいえ、遅きに失するのではないでしょうか?しかも取材で初めてこの事実が報道されたということは、中小企業庁に隠蔽の疑義がもたれても致し方がないようにも思われます。しかも、返還の希望を受け取ることができていない事態は、明らかに混乱を現(あらわ)していると考えられ、早急な対応が求められるのではないでしょうか。
一方、この混乱の背景には、不正受給をしてこの摘発を恐れた人がたくさんいたという事実を示すことにほかなりません。自身が改心したというよりも大学生の親が気づいたり、そそのかされたり、あるいは誘われたりと、安易(あんい)で稚拙(ちせつ)なきっかけが多いようです。これらを受けて、不正を許さないといった世論が後押しして、いっそう捜査や摘発が強化されることが予想されます。ようやく10月下旬には返金の受け入れ先が案内されるようですので、自主的な返金を促されているものと考えられます。
持続化給付金不正受給関する報道②
gooニュース(10月6日)によると、
「新型コロナウイルスの影響で経営不振に陥った中小事業者に支給される「持続化給付金」を巡り、経済産業省は6日、不適切な受給を自ら申し出た場合に、加算金を科さない方針を発表し、自主的な返還を呼びかけた。
梶山経産相が6日の閣議後記者会見で、不正受給による逮捕者が全国で30人を超えたことを明らかにし、「『誤って受給した』と返還を希望する方が出てきている。一刻も早くご相談を」と述べた。
持続化給付金制度では、不正受給者に対し、受給額に加え、年率3%分の延滞金と、延滞金も含めた合計額の20%分相当の加算金を返金するよう求める。経産省によると、不正受給を自ら申告すれば、加算金は科さないが、刑事罰については別途、警察が判断することになるという。
持続化給付金は5月に給付が始まり、5日時点で約346万件、給付総額は約4兆5000億円に上る。手続きが簡単なことから不正受給が後を絶たず、7月以降、愛知、兵庫県警などが大学生らを逮捕。警視庁も先月29日、知人の会社員が個人事業主だと偽って100万円を詐取した松山市の無職男(36)ら3人を詐欺容疑で逮捕している。」
まず、今年の5月1日に申請の受付が始まった持続化給付金は、わずか4か月あまりの10月5日までに、約4兆5000億円(約346万件)にも達していることには、驚きを隠せません。
つぎに、持続化給付金の不正受給による逮捕者は、今のところ、30人を超えていることが、経済産業大臣から発表されたということです。これによって、不正受給をした場合には、どうなるかを言明するねらいもあるように思われます。つまり、経済罰と刑事罰を明らかにすることによって、自主的な対応を求めています。具体的な罰は、つぎのとおりです。
- 経済罰…受け取った給付金を全額戻した後につぎのペナルティが計算されて追徴されることになります。
- 延滞金…年率3%
- 加算金…年率20%相当(自主的な申告の場合は免除)
- 刑事罰…ここの事案を捜査して事実関係が明らかにされた後に決められます。
ここで問題となり得るのは、不正受給をした者が受け取った給付金を返金しようとしても、国の対応の遅れによって、返金できない状態にある現況では、返金の遅れによる不利益を不正受給者に負わせてはならないと考ます。一般的には、自主的に返金を申し出た時以降は経済的なペナルティーを負わせないことに妥当性が認められるように思います。とすると、梶山大臣が言うように、「一刻も早く相談を」されたほうが、経済的な負担を軽くすることができるのではないでしょうか。
適切なアドバイスは専門家に相談
未だ事実関係は知り得ることはできませんが、沖縄の案件では、税理士の不正な関与が取り沙汰されています。もしこれが事実であれば、制度設計が見直されるほどのインパクトがあるように思います。士業による不正な関与がないことを祈るばかりです。
今回の不正受給の多くは、持続化給付金に目がくらんだ人が「ついやってしまった」という事案が大半を占めるように予測されます。こういうときに、士業がその専門性を活かして、適切な助言をする立場にあったと思います。不正によって給付金を手にしたらどんなしっぺ返しがあるか、不正は簡単に見破られる手口であることも伝授できたかもしれません。とはいうものの、スピーディーな経済支援を目指した国と簡単に給付金が手に入ることを知る機会があれば、「つい…」という事態も十分に想定されます。
結論を述べさせていただくと、不正受給の清算は早いほうがよいことは、本文で述べたとおりです。連絡先は右側のチラシの下に記載されています。
経営においても、「つい…」ということはしばしばあるかもしれません。そういうときにも、「不正は不正」あるいは「是々非々」を納得いくまで説明するように努める税理士をお探しなら、つぎのメールにてご一報ください。